ジョン・C・リリーがかつて行ったように、私も隔離タンクでの実験を行うことにした。
リリーは、高知性体であるイルカと交信を行うため、水の中に球状のタンクを作り、現実の世界と一切を切り離し、ケタミンやLSDを投与し、自己の内的宇宙の探索に耽った。それを再びやろうとしているのである。
ケタミンをご存知でない方も多いことだろう。塩酸ケタミンは外科手術を対象とする全身麻酔薬であり、現在、日本では獣麻酔薬としてのみ用いられている。78年にアメリカで刊行された『明るい世界への旅』で広く幻覚作用や乖離麻酔作用、臨死体験的作用――これについてはいずれ触れよう――が知られることとなった、あの薬品だ。
ジョン・C・リリーは、著書『サイエンティスト』にて“ビタミンK”とこれを称している。確かに副作用は多い薬品だ。不整脈、血圧低下、急性心不全などの循環器系障害も起きることさえある。心は別の世界へと飛び立ち、暴れまわり狂人と化すことすらある。それでさえ、リリーによれば、ビタミンと称するだけの薬品なのである。
私は隔離タンク(Isolation Tank)に入る前に、ケタミンの自己投与実験を行った。結晶を気化させ吸入し、それから約一時間、精神は肉体や現実から遊離し、別世界へと飛び立った。視野は狭まり、まるで私は死んでいるかのようであった。同じことを、これから隔離タンク内で行い、高知性体との波長のシンクロを図るのである。
準備はすでにできている。目の前にあるものが現実とは限らないのだが。
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作り出したのも東京帝國大学の長井博士である。漢方である麻黄(マオウ)からエフェドリンを単離するのに、最初に成功したのが長井博士なのだから、当然のことだ。ただし、覚醒作用が確認されたのは日本ではなかった。ドイツだ。同じ枢軸国であったドイツのナチがメタンフェタミンを手に入れ、覚醒作用を確認。かのアドルフ・ヒトラーは自らの手で静脈注射を行っていたという。
私はこれをいかに使うか考えることとしよう。
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