薬学/精神医学 アーカイブ

2004年04月03日

統合失調症(旧名称:精神分裂病)

[DATA]
・昨年8月、「精神分裂病」は「統合失調症」へ名称が改正された。
・統合失調症は約100人に1人という割合で発症する代表的な精神疾患。
・入院患者の2~3割は社会的要請による入院とされ、今回の名称改正も同じ観点から。

 昨年8月、横浜で開かれた「世界精神神経学会」にて『精神分裂病』から『統合失調症』への改称が発表された。

 精神分裂病は1900年初頭、躁うつ病と並ぶ精神疾患、「早期痴呆症」として疾患単位を独立させられた。しかし現在の精神分裂病は、schizo(分裂)・phrenia(精神機能)という語源が示す通り、精神機能に限っての分裂状態を指すもの。治療によって精神状態が安定していれば、問題なく生活を営めるということだ。だが、「早期痴呆症」のイメージは依然引きずられ、「精神が分裂し、治らない」と患者の人格を否定するような偏見・差別が強く、問題とされていた。

 今回の改称に貢献したのは、「全国精神障害者家族会連合会(全家連)」。93年に全家連が出した意見書には、「精神分裂病」という名称の語感の悪さや、言葉のイメージの社会的な催危険性についての指摘があった。それとは別に、医薬の発達により、疾患の過半数の病状が抑えられることも分かってきたこともある。それらの声に呼応し、学会は検討を迫られ、改称に至ったという経緯だろう。

 メディアは、「今やコントロール、ないし改善可能な疾患である」と、社会的偏見・差別の解消を主軸に報道していた。このことに関し、複数の都内クリニックの精神科医に尋ねると、「家族にとっては安心材料になるかもしれない。しかし、昔に比べれば投薬でコントロールしやすくなったとは言えようが、治療の難しい病気であることに変わりはない」と、改称に大きな期待は見せているようではない。

 今回の改称は、疾患性質そのものの転換を示しておらず、しかも、患者ではなく、家族連合会が推し進めてきた案であったことに注視すべきだ。確かに家族の気持ちを汲み取ることはできるのだが……。

 全家連、医療現場と報道の考え方のズレが、「精神分裂病」という旧名称の隠語化(=社会的排除の助長)を促進しまいかと懸念してやまない。(初出:『サイゾー』インフォバーン刊)

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2004年04月22日

ドリエルの価格設定のおはなし

 恋とはぐれた夜空に絶え間ない愛を! どうも、フェブラリーです。えっ? メガネをかけてないからわからなかったんじゃないかな? はて、最近めっきりと暑くなって困ってます。メガネすら暑いですね。

 さてさて……。そんな眠れない夜に、ドリエルっていう睡眠“改善”薬のお話です。

 今年4月、エスエス製薬より発売された睡眠改善薬「ドリエル」。発売されてから、順調に知名度と売り上げを伸ばし「4~9月の累計(営業ベース)で100万個以上、店頭価格で13億円を突破する販売を達成することが出来」(エスエス製薬)たとしているほどだ――

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2005年01月09日

萌えMDMAネガティヴキャンペーン

 大阪府の麻薬毒劇物グループと薬務課が、合成麻薬MDMA(エクスタシー)撲滅のためのネガティヴキャンペーンを行っていて、それはいいんだけど、なぜコミック柄使うか。そしてなぜまた絵柄がエロ本のキャラみたいなんだ。萌え要素に狙いをつけたのか。萌えネガティヴキャンペーンでございます。

コミックを活用した薬物乱用防止啓発用ポスター

 リンク先をご覧になれば、アニメキャラが祈ってるというキャンペーンポスターの変な場違いの滑稽さを放っていることがわかると思うのですが。

 あとこれ、政府のネガティヴキャンペーンとか役人がよく使うやり方なんですが、MDMAが麻薬で危険だという理由に、「覚醒剤によく似た作用を示」すからだって書いてあります。悪いものになんか似てるならそれも悪いに決まってる戦法です。

 覚醒剤が「メタンフェタミン」で、エクスタシーが「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン」だと。同じ「メタンフェタミン」が付いてるからこんなもん一緒、十把一絡げに持ってけ泥棒! ってな感じですね。

 ちなみにエクスタシーは、つい去年の中盤から後半にかけて、アメリカではPTSDの臨床に使うことを限定付きながら許可されたばかり。あれ? 日本ってアメリカの属国、52番目の州じゃなかったっけ?

 とりあえず滑稽な感じがします。もちろんですが、みなさん麻薬はダメ、ゼッタイですよ! あーあ、どこをとってもバカらしい。

関連記事:2004年04月08日『アホでマヌケな“エクスタシー論文”』

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2006年08月10日

『アホでマヌケな“エクスタシー論文”』

 けっこう前に雑誌『サイゾー』に発表した記事の元原稿公開。

■アメリカ科学振興協会の発行する科学誌『サイエンス』に、非合法ドラッグ・エクスタシーの危険性を示唆する論文を“撤回する”記事が発表された。

■撤回した論文は、アメリカ・ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学の研究班が前年9月に同誌に発表したものだ。今回、彼らが出した記事の内容は“エクスタシーを遊び用に使われる量で摂取すれば、厳しいドパミン神経毒性を受けることになるだろう”という危険性の示唆部分の撤回であった。

■エクスタシー。今やそれは、日本でもっとも注目を浴びている非合法ドラッグだと言っても言いすぎではない。警察庁が発表した昨年度上半期(1~6月分、8月7日付)の薬物犯罪統計データによれば、すでにエクスタシーの押収量(30万642錠)は、昨年度押収量を超えて過去最高となっているほどなのだ。

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2006年08月16日

記号化する「うつ病」

■今や誰もが知る言葉となった“うつ病”。厚労省の発表によれば、うつ病をはじめとした、主に軽度の精神疾患(気分障害)にて精神科や心療内科へ通院する患者数は、人口の1.5%を超え数百万人となり、増加の一途を辿っているという。

■うつ・不安啓発委員会のホームページ(http://www.utu-net.com/)開設や、「うつ気分を感じたら病院へ」と呼びかけるテレビCMまで流されている現状とは、一体何なのだろうか。

■そもそも、うつ病とは何なのか。一般には、「抑うつ気分が慢性的に起こり、2週間以上もそれが続くような場合」に疑われる病気だとしている。

■さて、うつ病に対して処方される多くの薬は、脳内の神経伝達物質(モノアミン)である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などの脳内に流れる量を増やすというものがほとんどだ。実際にも、うつ病が疑われる場合に、ファーストチョイスとして医師が処方する薬は、「パキシル」「デプロメール」などのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる種類の、脳内セロトニンの流れる量を相対的に増やし、気分を安定させる作用を持つものだ。

■つまり、逆に見るならば、うつ病とはセロトニンなどの脳内伝達物質に関わる疾患であり、「落ち込みがち」だといって、必ずしもその薬を必要とするかは、わかりにくい。

■ここで現れる一つの問題は、抑うつ気分というのは誰にでも起こりうるのだが、その多くを一絡げに“うつ”としてしまう可能性を否定できないことである。

■そもそも、落ち込みがちであるとか、気分がなかなか晴れないといった症状は、目に見える切り傷などとは違う。患者の“申告”によってしか、医師は判断ができないということに、ここに論じる問題の端を発するのである。つまり、うつ病は少なくとも、ある程度“申告病”であるのだ。

■統合失調症における陽性症状や、躁病といった、一見して判断がしやすい精神疾患もある。だが、陰性症状を主な症状とするうつ病の“抑うつ状態”については、たった10分や20分の簡易的な診療では、医師も患者に対して十分な理解をすることは難しいと思われるだろう。

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2006年08月18日

パニック障害(Panic Disorder)

 えー、はじめて精神科に通院するきっかけとなったのは、パニック障害による恐慌発作が何度か起こったことで、さすがに耐えられなくなったからでした。高校二年の終わりか三年のはじめごろだったと記憶してます(あんまし当時の記憶がないんで時期は曖昧)。

 パニック発作というのは、体験したことのない人の想像を絶する症状です。どうなるかというと(僕の場合)、まず不安感がいつもより強くなってくる、ないしは予期不安(もうすぐ急激な不安感がやってくるのではないかという感覚)が訪れ、その数分後に“恐慌”と形容するのがピッタリあてはまるとてつもない不安感が急激にやってきて、同時に過呼吸を併発したりすることで「このままだと死ぬ死ぬ死ぬ…(延々ループ)」といったネガティヴな感情が、数分の間、本来正常な思考をジャックするのです。発作自体はそんなには長くなかったのですが、その時間の長く感じること。頭が真っ白になるという言葉があるけれど、それの反対のような感じ。頭が真っ暗・不安思考の嵐に見舞われるのです。これはとてもつらくて耐えられるものではなかったですねえ。ハンパじゃないですこれ。

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2006年09月12日

世界の処方薬売り上げトップ10

 こちらをクリックすると、世界の処方薬の売り上げトップ10がスライドショーで見られます。

 一位が高コレステロール血症治療剤。二位が抗血栓剤。つづいて胃食道逆流症治療薬、喘息治療剤。で、そのあとにやっぱりスキゾフレニア(統合失調症、元分裂病)治療剤「リスパダール」とか抗うつ剤「エフェクサー」が続くんですねえ。

 トップがやはりアメリカ人のあの食生活からきているのはかなり想像通りだし、世界的に精神疾患がかなり目立っているのも想像に難くなく、やっぱりなあという印象がしますね。

 ちなみにこの「エフェクサー(成分名、ベンラファキシン)」はSNRI(Selective Serotonin & Norepinephrine(Noradrenaline) Reuptake Inhibitor:選択的セロトニン・ノルエピネフリン(=ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤)というのに属する薬で、その前に開発されたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の進化バージョンという感じです。

 SNRIの機序(効く仕組み)を簡単に言うと、脳の中はシナプスとシナプスの間で伝達物質をやりとりして体を機能、制御させているわけですが、その中の気分の安定にかかわる物質の「セトロニン」とやる気にかかわる「ノルアドレナリン」の伝達濃度を高めて、落ち込まないようにするという仕組みです(というのも「モノアミン仮説」からの説明ですが)。

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2006年09月13日

幻覚剤は脳を壊さないとの研究結果

 こちらのお話。ペヨーテというのは、日本名ウバタマ(鳥羽玉)というサボテンのことです。

Hotwired: 研究結果:幻覚剤「ペヨーテ」は脳を損傷しない

 今のところ米国内で唯一、法的に使用が認められている[後述のネイティブ・アメリカン・チャーチに対してのみ]幻覚剤の「ペヨーテ」は、定期的に使用しても脳の働きに長期的な悪影響を及ぼさないことが、この種の研究では初めての調査で明らかになった。

 このペヨーテに含まれる幻覚効果をもつ成分は、メスカリン(3,4,5-Trimethoxy-phenethylamine or 2-(3,4,5-trimethoxyphenyl)ethanamine)。日本の法律では、麻薬に指定されていますが、鳥羽玉というサボテンを買ってきて、磨り潰して汁を飲めば法に触れることはないわけで、幻覚効果が欲しくなったら買えばいんですね。日本のものはだめだそうですが。まあいいとして。

 エクスタシーも、ジョンホプキンス大学で、脳の損傷説を否定していますねえ。なんだ、別に脳に悪いわけじゃないんじゃないんですね。なんで禁止なんでしょうか。お酒は脳を破壊しまくるのに。

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2006年09月24日

睡眠改善(?)薬「ドリエル」「UNISOM」の薬価と不思議

 体調が悪いです。おなかが。まあ眠れない夜に、ドリエルっていう睡眠“改善”薬のお話ですよ。ちなみに最近よく聞くUNISOMも同じ成分です。

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これがユニソム。

 (転載註:二年ちょい前)エスエス製薬より発売された睡眠改善薬「ドリエル」。発売されてから、順調に知名度と売り上げを伸ばし「4~9月の累計(営業ベース)で100万個以上、店頭価格で13億円を突破する販売を達成することが出来」(エスエス製薬)たとしているほど――。

 このドリエルは、聞き慣れない「睡眠改善薬」という名称で売られている。そこで中身は一体何なのかを調べてみた。すると新開発された薬ではなく、以前から「レスタミンコーワ錠」(興和製薬、以下レスタミン)などとして売られてきている、抗ヒスタミン剤“塩酸ジフェンヒドラミン”であることが解った。この薬は、抗アレルギー剤ながら眠気・口が渇くなどの副作用が強いために追いやられ、現在はあまり使われなくなったものだという。

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2007年07月14日

睡眠導入剤で意識のないまま何かをしでかす

 ニュース引用から健忘の仕組みの話でもしようかと。

 あ、健忘っていう言葉を知らない人もいるかもしれませんので。えーと、まあ起きてて何かしてるんだけど、それをやったことを記憶してないっていう状態のことですね。一応広辞苑によれば、「見聞きしたことを記銘できず、すぐに忘れてしまうものや、ある時からさかのぼって過去の記憶をなくすものがある」って書いてます。前者は前向性健忘、後者を後向性健忘と言う言葉で表したりします。

睡眠導入剤を飲んで寝た後、副作用で意識しないまま車の運転するなどの恐れがあるとして、厚生労働省は国内で承認されているすべての睡眠導入剤について、使用上の注意を改訂するよう、製薬業界団体に指示した。具体的な副作用報告があった3品目には、新たに「警告」の記載をするよう求めている。(朝日新聞【清水健二】 )

 えっとこれ、まあ確かに副作用なんですけど、よく知られた副作用ですね。ベンゾジアゼピン(以下BDZ)前向性健忘というやつです。BDZ薬剤には坑不安効果と傾眠効果があります。海馬(脳の中でも記憶をつかさどるとされている部位)を中心に分布してる受容体に結合して、GABAの活性を高めるので、不安を鎮めたり、眠気を催させたりするわけです。で、海馬の活動性を抑える際に、同時に記憶機能も抑制することになるわけです。んで健忘が起こると。あー、あとアセチルコリンも記憶に関係しますね。BDZってセロトニンとアセチルコリンの作動系も抑制するんですよ。だからそれも相乗するでしょう。

 んで、BDZ薬剤の中で特に半減期が短くて、力価が比較的高い薬でケン坊はよく遊ぶので健忘が起こりやすいというわけ。

警告を加えるのはゾピクロン(商品名アモバンなど)、酒石酸ゾルピデム(同マイスリー)、トリアゾラム(同ハルシオンなど)で、夢遊症状や一時的な健忘、もうろう状態での運転などの恐れがあるとしている。(朝日新聞【清水健二】 )

 詳しく分けると、ゾピクロンはシクロピロロン系薬剤、ゾルピデムはこれ、非バルビツールっていうずるいところに逃げよう(笑)、で、ハルシオンがBDZね。シクロピロロン系もベンゾジアゼピン系もチアノジアゼピン系も作用機序は似通っています。なのでBDZ前向性健忘が起こりやすいよ、意識ないまま運転しちゃったりするよ。というお話でした。はい、薬学講座おわり。

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2007年10月02日

ナルコレプシーとかモダフィニルとかのお話(1)

 すでにモダフィニルは医薬品として認可がおりています。その前に書いたものですので、その点お気をつけて以下、お読みください。なお、リタリンはうつ病の適応症からはずれます。詳しくはググってくださいねー。

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 ナルコレプシー(Narcolepsy)という病気をご存知でしょうか。人口の0.2%に満たない程度の患者がいるという、けっこう稀な病気です。って別に前置きもあったもんじゃないですが、それにまつわるお話です。

 ナルコレプシーというのはすんごく骨抜いて簡単にいうと「眠り病」ってやつです。その症状をまたしても簡単にいうと、たとえば普通にしゃべってるときにストンと寝ちゃうとか、発作的に眠りに入ってしまうという、傍目にはおねむりさんな感じです(とかいうと怒られますのでもうちょっと突っ込みたい方はこちらをごらんあればよろしいかと思いますのでリンク先へどうぞ)。

 んで、このナルコっていうのは脳波測定をすると本当にこの病気なのかどうか、というのがわかると言われています。というのも、起きて(覚醒状態に)いる普段の日中にレム睡眠だかノンレム睡眠だか(ここも飛ばしますが、なんとなくお解かりですよね)がストーンと入ってきて、カクーンとなっちまうっていうわけで、その波長を計測することによってこの病気に当てはまるか、みたいなことが大体わかる、というわけです。

 なんでこんな話をいきなりか、というと、ちょうど今、厚生労働省がパブリックコメント(通称、パブリッコもしくはパプリコ/嘘ですよ、パブコメって普通言います・笑)を募集している「モダフィニル」という薬に関連するお話だからであります→件のパブコメはこちら)。

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