ニュース引用から健忘の仕組みの話でもしようかと。
あ、健忘っていう言葉を知らない人もいるかもしれませんので。えーと、まあ起きてて何かしてるんだけど、それをやったことを記憶してないっていう状態のことですね。一応広辞苑によれば、「見聞きしたことを記銘できず、すぐに忘れてしまうものや、ある時からさかのぼって過去の記憶をなくすものがある」って書いてます。前者は前向性健忘、後者を後向性健忘と言う言葉で表したりします。
睡眠導入剤を飲んで寝た後、副作用で意識しないまま車の運転するなどの恐れがあるとして、厚生労働省は国内で承認されているすべての睡眠導入剤について、使用上の注意を改訂するよう、製薬業界団体に指示した。具体的な副作用報告があった3品目には、新たに「警告」の記載をするよう求めている。(朝日新聞【清水健二】 )
えっとこれ、まあ確かに副作用なんですけど、よく知られた副作用ですね。ベンゾジアゼピン(以下BDZ)前向性健忘というやつです。BDZ薬剤には坑不安効果と傾眠効果があります。海馬(脳の中でも記憶をつかさどるとされている部位)を中心に分布してる受容体に結合して、GABAの活性を高めるので、不安を鎮めたり、眠気を催させたりするわけです。で、海馬の活動性を抑える際に、同時に記憶機能も抑制することになるわけです。んで健忘が起こると。あー、あとアセチルコリンも記憶に関係しますね。BDZってセロトニンとアセチルコリンの作動系も抑制するんですよ。だからそれも相乗するでしょう。
んで、BDZ薬剤の中で特に半減期が短くて、力価が比較的高い薬でケン坊はよく遊ぶので健忘が起こりやすいというわけ。
警告を加えるのはゾピクロン(商品名アモバンなど)、酒石酸ゾルピデム(同マイスリー)、トリアゾラム(同ハルシオンなど)で、夢遊症状や一時的な健忘、もうろう状態での運転などの恐れがあるとしている。(朝日新聞【清水健二】 )
詳しく分けると、ゾピクロンはシクロピロロン系薬剤、ゾルピデムはこれ、非バルビツールっていうずるいところに逃げよう(笑)、で、ハルシオンがBDZね。シクロピロロン系もベンゾジアゼピン系もチアノジアゼピン系も作用機序は似通っています。なのでBDZ前向性健忘が起こりやすいよ、意識ないまま運転しちゃったりするよ。というお話でした。はい、薬学講座おわり。
