音楽レビュー原稿です。
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不安である。
担当編集ソレンから手渡されたジャケットの女性がこちらを向いている。嫌だ。「このアルバム、不安になりますよ」と言われていたとおり、私も漠然と不安になってしまった。
「飛ぶひと」の詩はこうだ。「飛ぶひとはおちる/おちるひとはさらにおちる(中略)泥にまみれそしてほろびる」。……やはり嫌だ。さらにその歌声が追い討ちをかける。どう聴いても覇気がない、だがそれにもかかわらず説得力だけはある。ああ、鬱っぽい。
だがそうも言ってはいられない。このアルバムは何なんだ? 鬱の本質はものごとの本質を見つめる目こそにある、というのが私の持論だが、どうやらそれに似たものらしいというのが歌詞から見えてくる。表題曲「幸福のすみか」では「手の届くところに扉がある/ここから出るのもよし/ここにとどまるもよし/すべてはわたしにまかされている(中略)花のように愛する/まわりの空気を」とある。
つまり、ネガティヴでもポジティヴでもない、ゲシュタルト崩壊した視野のそのまた先へ――。そんな方向を見つめる目、それが私を凍らせたジャケットのPHEWのまなざしだったのだ、と私は思うのである。……評はさてとりあえず、精神疾患のある方は試聴を避けたほうがよいかも。健常な方も不安になる可能性大。取り扱い注意。
(文/西尾祐飛 この文章を転載したい場合はトップページよりメールでお知らせ下さい)
