■ここで冒頭のデータを踏まえて考えてみよう。うつ病患者の増加は、メディアによるうつ病という病気の存在を知らせることとリニアリティをもった関係にあるのではないか。つまり、全体的にうつ病の患者数が底上げされるのは、“申告病”であるがゆえの必然ではないだろうか。そして、全体的なうつ病の程度は軽症化しているとも言えるだろう。 ■日本において、うつ病という診断名は、15年から20年ほど前からゆっくりと人口に膾炙しはじめた。そして今では、誰しもが気軽に「うつ気味」という言葉を口にするようになった。まさに、これは「病名の記号化」が起こったのだと言えよう。(「精神分裂病」が悪い印象を与える病名として「統合失調症」に“名前=記号だけ”変わったというのも最近であることに注意だ) ■記号化するうつ病。入れ物(病名)の変わらない新しい中身(症状)はなんなのだろう? 都会のクリニックにはうつの患者があふれ、予約制を敷き、十分な診療時間を取れないという悪循環すら起こっている。その元凶は、メディアの主導する新しい「うつ」の氾濫が招いたものなのではないか。 ■メディアによって記号化され、すでに変質してしまった「うつ」の濫用が、果たして今何の意味を持つのであろうか。(書き下ろし)
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