『N2』――僕らの時代に vol.3番外編

 ひさしぶりに、第三回目のN2対談を収録、と思ったら今回はNが一人抜けて、Tさんこと武田さんにお越し頂きました。ネット上でばーっと対談したものです。(前回『N2』はこちらこちら

2004/04/26 初回収録、2004/6/23 ちょう手抜き加筆構成
「ポータブルミュージックプレイヤーから何が見える?」

西尾■さて、iPod miniがアメリカでリリースされたので、PC雑誌のレビューなんかに一瞥をくれてやったらば、あらまあ大絶賛しているところが多かったりしてるんだよね。でも、どうやら音質に問題があったとかで、クレームや、回収騒ぎが起きてた。大絶賛はどこへやら?(笑)
 そんなわけで、各種いろいろなフォーマットが混在している、ムーバブルオーディオプレイヤーもろもろについて語ってみようと思うのですが、どういう印象ですか?

武田●圧縮音楽そのものの流れとしては、確実にMDからMP3にシフトしてきているよね。ただプレイヤーのことを考えると、まだMDの方が優勢だと思う。音質面やバッテリーのことを考えると、MP3ウォークマンは未成熟と言わざるを得ない。

西尾■それはそうだね。じゃあ大別すると、MD派・CD-R派、データウォークマン派、そしてiPod信者含んだHDD派っていうのがあると思うんですよ。それぞれの意見はあると思うんだけど、僕はコンパクトで、かつメディアの入れ替えの必要がないMP3データ系に惹かれるんですね。それは実際、安ければiPodでもいいんだけど。
 その流れで、MDっていうのはどうも僕には馴染まない。単純に録音時間が短いのもある。圧縮技術が開発されて、これから容量は上がっていくのは確実だろうけど、SONYが技術を持っている以上、ATRAC以外のフォーマットを受け付ける気がなさそうなので、ますます魅力が逓減していくの。
 バッテリーなんかは、できれば交換できる充電電池が使えるものがいいと思います。だって、切れたときに充電ができないと、バッテリーのランニングコストばっかりかかっちゃう。二つ充電バッテリー用意すればいい。

武田●確かに、僕も録音時間とバッテリーの持ちが重要な部分だね。ポータブルプレイヤーは通学途中に聴くのに使うことがほとんどなんだけど、電車内でメディアを交換するのは大変。バッテリーも、電池を買う手間が嫌だし、ランニングコストも気になる。でもMP3系って、なぜかバッテリー駆動時間が短いじゃない。

西尾■そうかなあ。僕は初期ソニーの64M内臓データウォークマンを使っていたんだけど、それは単4電池一本で動くやつだったんですよ。だから、さっき言ったとおりに充電電池を数本持っていたから、電池の持ちを気にしないで使えてたんですよ。
 電池については、専用の電池を使うものじゃなくて、汎用のものが使えないと困る。そういった面では、iPodのような、専用のバッテリーじゃないと動かないんじゃ困る。
じゃあ機能面はこういったところに問題があるとして、もう一つの視点もあるよね。家にドンッって置くコンポとは違って、“ポータブルだからこそ”持ち歩くインセンティヴを、ブランドやデザイン、操作性が与えてくれないと困る部分があるのは否めないと思うんですよ。
 それこそiPodが売れる理由が他にどこにあるかと問われれば、僕は閉口しちゃうよ(笑)。

武田●僕は、ポータブルオーディオにそういう部分はほとんど求めてないんだよ。移動中に音楽が聴けることにだけ意味があると思っているから。iPodがそれだけのあり方から逸脱した製品であるというのは分かるけど。

西尾■そこについて言えば、個人の志向性に依存してそれぞれのフォーマットなり、ハードがあるということだね。かの宮崎哲弥氏は、僕に「MDしかないに決まってる!」って言ってたんですよ(笑)。
 さて、そのおっしゃる、単なるポータブルプレイヤーから“逸脱”したiPod。iPodの好調な売れ行きというものが示す一つの側面には、ソフトが嗜好品だった時代から少し転換があって――これはAPPLEの思惑に乗ってしまったっていうことだけど――ハード自体がどんどんと嗜好品化していることを如実に示していると思う。もちろんそこには、デザインなんかを求めないという、武田君の意見も含まれるわけじゃないですか。
 要はマーケットのセグメンテーションなんだよね。イノベータが飛びつくものか否か、みたいなものが売れ行きというより、アドバタイジングを大きく動かすということなわけだ。先ほど言ったように、雑誌に取り上げられるとはそういうことだから。

武田●HDD系に日本メーカーがあまり参入してないというのには、何か理由があるのかな? それこそSONYからきちんとしたHDDプレイヤーなんかが発表されれば、iPodは一部のモノ好きが買うだけになると思うよ。

西尾■そこには著作権業界なんかとの軋轢があるんじゃないの~(適当)。MP3賞賛に簡単に結びつきかねないから。Winny作者捕まったりしてるしね。見せしめで。
 でもしかし、すごい容量だよね。iPodで60ギガでしたっけ?
 そこで僕がぜひやって欲しいのはね、日本全国自転車の旅少年いるじゃないですか。彼らがHDDに膨大な量のMP3データをブチ込んで、それを聴破しながら旅するっていう(笑)。それくらいのスパンがなければ全部聞けっこないじゃないですか。バッテリーの持ちとか、充電は別として。誰が散歩であんな60ギガのMP3を聴けますかっていう。相当歩かないといけないよ? プレイヤー壊れる前に足痛めてるよ(笑)。 もうさ、足痛めないでなんとか使い切るにはさ、HDDプレイヤーを持ってシベリア特急の端から端まで乗って旅するくらいしかないんじゃないの? 失笑ですよ。
 実際、あそこまでの容量を普段求める人はほぼゼロでしょ。なんか容量多いとよさそうだ! みたいなノリなんじゃないの。

武田●60ギガは確かに容量の大きすぎる気がするね。1曲5MBとして、単純計算で12000曲。どこにそんなに音楽があるんだっていう……。もちろん音楽だけじゃないデータを持ち運ぶための、リムーバブルストレージデバイスとしての活用方法もあるんだろうけど。パソコンのストレージだと、なんだかんだで容量は多ければ多いほどいいのかもしれない。でも、あくまでもポータブルオーディオとして考えるのなら、そんなにはいらないと僕は思う。容量を少なくして、もう少し廉価になってくれた方が嬉しい。


西尾■これはある筋から聞いた話なんだけど、全世界の音楽データをMP3に変換したそのデータ量が全て入るHDDがもう5年もしないうちにできてしまうらしい。だから、全世界の音楽プリインストールモデルだって可能かもしれないっていう話なのね。断らないといけないのは、これは3.5インチHDDの話になるんだけどね。
 あと、疑問に思うことがあって、ユーザーのリテラシーが本当に上がったのかということ。MP3/WMA対応CD-Rウォークマンが当たり前になったみたいだけど、全員が全員CDRはもう焼けるってことになってるのかなと思うわけ。
 実際、大学生でPC使える人ってほとんど見たことがないんですよ。彼ら彼女らにとって、こんな議論こそ無駄の極みなんじゃないかと思うと……。
 だからね、買い替え需要があるのは本当にイノベータだけだと思うわけ。逆に、今持ってるMDやらCDプレイヤーが壊れて買い替えをするときに、すごく困惑するんじゃないかなあ。技術先行で、カスタマーの大部分がついていっていない可能性だってあるよ。

武田●それには同意するよ。6年前からパソコンをそれなりに活用している人が知り合いにいるんだけど、いまだiTunesを使いこなせず苦戦しているんだよ。その今言っていた、「技術についていけていない」っていうあたりの責任がどこにあるのかはわからないけど、この音楽だけの話に限らず、多かれ少なかれパソコンが絡んでくることで、一気に使いこなすことへの敷居が高くなるような気がする。でも、それについていけないから取り残されるっていうのは、方向性として間違ってるんじゃないかな。

西尾■だったらメディアリテラシー教育徹底ですかねえ。初等教育からパソコンのなんたるかを徹底的に、国民全員もれなく叩き込むっきゃないと(笑)。したらITに限らず産業は回復するってこってすか? それができるっていう国なら、さすがマウスの使い方すら知らなかった、森“IT革命”善朗を首相に選んだ民主主義国家だけあるよね! ――要は無理ってことを言いたいんだけど。

武田●ところでさ、アップル社のiPodの利益源って何か知ってる? これは聞いた話なんだけど、利益の大部分というのは、本体を販売して得られる収益にあるわけでもなければ、音楽販売(ネットからのダウンロード課金)にあるわけでもなくて、BtoBの部分にあるらしいよ。つまり企業と組んでキャンペーンを行って、それで収入を得るという構図らしいんだよ。

西尾■おっと出ました常套手段。タイアップはどこでもお馴染みだね。天下り国家日本にお似合いってこった。あーあ、もうアナログテープでいいや、僕は。ローファイに生きます(笑)。市場、法律、規範、そしてコードっと。とにかく、せめて日本の4割のみなさんがレッシグの『CODE-and other laws of Cyberspace』を読んだっていう前提ができてから考えましょ。あ、永遠に来ないか(笑)。

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対談者:武田さん(半匿名) 某有名私立大学理工系大学院在学。23歳。彼のブログは「こちら

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