『N2』---僕らの時代に vol.1.1

2002/06/08(土) 19:05:00収録分再録
『N2』---僕らの時代に
 何が違法で何が合法?ネット上のコモンズはどこにステイブル・ポイントを見つけるのか――。N2がネット上のアノミーを斬る!

西尾● そういえば、最近avexからコピープロテクトCDが発売されたね。あれは結局何をしたいのかっていうと、半分はショー、宣伝効果狙いだよ。やはりこういうパフォーマンスも資本論理が裏付けてあって、結果、株価を上げようと思ったわけ。でも気づくよ、特にプロは。そして結果失敗した。あの技術は、実は諸刃の剣。CDのダイナミックレンジを狭めて、つまり音質を犠牲にしてしまう。第一、あれは本来のCDの規格から外れているんですよ?もう、作り手にしてみれば、これは大変な屈辱ですよ。ここでまず、作り手のモチベが下がるのは明確。作り手も受け手もエンターテインされない。そうすれば、音楽流通だけではなく、音楽そのものが疑義されますよ。でも、音質なんかはほとんどの購買層にはどうでもいい問題なんでしょうね。トレンドに任せて、消費される音楽をずっと量産してきている日本の腐った悪循環です。これでは日本の音楽のセレクタビリティの向上はまず見込めないと僕は思うね。

中村◆ もう出回ってる旧来のCDの量の方がはるかに多いよ。実効性なんて皆無に等しい。最近食料品についても原産国や産地を偽ったりとかあるじゃん。寿司屋で実は注文したのとは違う、似た味の魚だったとか。ああいうのもきちんと食料品について知識持ったり、味わかっていたら騙されない。それと同じで音質がクソだから買わないっていう風になったらいいよね。

西尾● 僕が今までずっと言ってきたことですが、やはり消費者としての意識・自覚が低い状態がこのまま続くのであれば、日本はもうダメだということです。そこでこの場合なら、音質なり、先ほどの例で中村さんが仰った味なりを吟味・取捨選択させる試行錯誤メソッドの形成というのを教育すべきでしょう。選択によってのみ享受される達成、すなわち、自覚的に探し当てた音楽を見つけたときの快感ですね、その満足の度合いのミニマムを上げていくこと、これしかない。

中村◆ 自覚か。自分は何聞いてるのか。自分が何を聞きたいのかの選択の基準を作る。

西尾● 一部にコピーガードをつけることを賞賛している輩がいますが、あれは全くの門外漢です(笑)。音楽はなぜ視聴できないのか。コピーできないのか。第一、個人の範囲ならば許されているのではなかったのか。これは言い過ぎではあるけれども、ちょっとした陰謀に感じざるを得ない。視聴できる音楽はテレビで紹介される売れている音楽だけしかないんですよ。ちゃんとあらゆるジャンルを聴いて、選択させ、自分の好みを見つけていく、これしかない。誰が聴いてもダメなものは滅ぶのが自然です。例えばフランスでは、全てのCDが視聴できるシステムを導入したレコード店があります。これは非常に合理的ですよね。

中村◆ あと、昔CDレンタルを禁止しようとレコード会社ががんばった時期があったじゃん。CD買ったらブックレットの中に「音楽を守ろう」とかなんとかPRが書いてあったのを覚えているな(笑)。でも結局CDショップとレンタル屋は共存しているわけだし。

西尾● 聞き手の側が、日本では分化してしまっている。パッシブであることがあたかも当たり前のようになっているよね。そしてアクティブである人。こちらが断然少ない状態なんだけど。これがCDショップとレンタル屋の共存が成立している所以じゃないか。そしてここでもう一つ。今問題にもなっている、ネットでの音楽の無断複製問題。

中村◆ ユーザー同士で音楽ファイルを共有して、互いに交換、ダウンロードできるソフトの普及ですね。日本でもアプリケーションをダウンロードした事で逮捕者も出ました。

西尾● 僕の調査によれば、ファイル交換ソフトを使っている人の方が、年にCDを買う枚数が多い。これは当たり前です。視聴によって選択に裏付けられた動機があるんだから。あらかじめバイアスのかかった視点から消費されると、当然景気に偏りが生じる。これは機会の均等配分原理からの逸脱です。いい加減にテレビメディアというものを考えなければならない。国民を音楽に、もしくは他の分野に自覚的になるための窓口として、テレビメディアはもう少し責任を負うべきだと思うね。ファッションと音楽をリンクさせすぎているきらいがある。

中村◆ なるほど。その手のソフトでバンバン落としている奴って、アニメとかアイドル好きな奴っぽいんだけど、偏見かな(笑)。予約限定特典、初回限定と通常版買っちゃう(笑)。

西尾● それもファッションだけど、日本的なモードに乗っているからややこしい。でも今のCDの売り上げは彼らの動向にかかっているといえるかもね(笑)。現段階では。でも僕の場合は、すばらしく気に入った音楽は間違いなく買うよ。それがアーティストへのちょっとした思いやりになれば、とか思って。

中村◆ そうだね。アニメに没頭できるヤツ、彼らが日本の消費を支えているかもよ(笑)。まだファイル交換ソフトは一般人レベルには浸透していないんじゃないかな?近い将来、携帯でMP3ダウンロードできたりするわけじゃん。そのぐらいの一般人でも簡単にアクセスできるレベルにまでになると、けっこう大きな変化くるんじゃないかって思う。

西尾● 重要なのは、CDからのリッピングが浸透した後。携帯からの音楽の自由供給は音楽会社、たとえばソニーが携帯産業にいるから難しいと思うよ。ただ、お金を払う動機が今のネットワークリテラシー上皆無だと言える。携帯電話で音楽をダウンロードする場合の課金もやはりソニーの布石なのかもしれないよ。第一さ、通信料金がとんでもかかるんじゃないか?これからネットでの金銭出納管理というものが今後普及して、デファクトになったとしたらやばいね。管理社会は進むよ。ネットバンクもそう。みんなネット上の覇権を握ろうと躍起になっている。これと同じような発想としてヤフーのウォレットっていうのがある。もしヤフオクやってる人がいたら、規約を一度読むべきです。管理されていることが良く分かる。

中村◆ 俺はそこまでソニーの力過信してないからな(笑)。これ以上携帯の機能増やしたり、通信インフラ整備しようとしたらそうなるんじゃないのかなあ。次々新製品作らなきゃならないし、新機能も増やさないと。

西尾● 当面は音楽機能付携帯の他社開発を打ち止めにするっていう状況を作るでしょう、ソニーを中心として。第一ATRACを持っているのはソニーなんだし。やはり今はまだ携帯端末まではいかないだろうけど。第一、音楽をちゃんと配給できるところと結託しないといけないから。すなわちそれが著作権協会なるものの出納管理にすぎないんだとは思いますけどね。

中村◆ レコード会社持ってない他社は?俺は最終的に携帯からMP3が聞ける、そうなると思うね。近い将来。携帯普及のスピードや機能の増え方を見るとこの流れは不可避ではないかと。

西尾● やるかもしれないが…、当然なるとは思うよ。でもワンクッション必要だね。あとは供給元サイト・コピーライトの問題がある。その供給サイトにまた広告の手及ぶ。するとまた音楽選択への障害が作られることになる。要は、広告というのはトラップなわけ。もちろん中にはいいトラップもあるにせよ、と言っておきましょう。

中村◆ これから、広告収入って形になるかもしれんね。民放でCMが入るみたいに、何曲が毎にCMが(笑)。近田晴夫は最終的に音楽はお菓子のオマケのように、商品の付随物になるんじゃないかと言ってる。違法ダウンロードを防ぐ研究は、かなり先見越しているだろうね。

西尾● 当然だと思うよ。そこに利権があるんだから、怖いね。もうちょっとナップスター、MXあたりで本気で問題と向き合うべきだよ。著作権協会なんかの言い分はもう時代違れ。音楽選択資質の向上は著作権との揉みあい、そして実証データによる論理的な攻撃を仕掛けるしかない。

中村◆ そう。本当にファイル交換でCD売上が減ってるか。ファイルの数と売上の関係はあるのか。モー娘の曲なんて誰でも共有してるのにあんな売れてる(笑)。

西尾● 売り上げが減っているわけがない。なぜなら、音楽にお金を消費する人口を見渡せなばいい。まず、音楽業界にはおかしいところがある。CD一枚の値段がほぼ固定であること。そして、一つの機関が著作情報を牛耳っているところです。

中村◆ インディーズではがんばっている所あるね。コンピレーションを500円で売ったりとか。韓国は著作権協会が複数あってケンカしてるらしいね(笑)もっと安くてもいいよ。

西尾● 一枚の単価が安くないから選べないんだよ。CDは視聴もさせてくれない。するとほかの知らない音楽に手をだす動機がそこに生まれない。ジャケ買いなんて中学生ができるもんじゃないよね。その初等中等教育段階からいろんなものに触れさせれば興味の広がりは進むでしょう。音楽に触れるインセンティヴをちゃんと配分していかなきゃ。まともな消費者を育てることがこれからの日本には必要だね。選択眼、これも試行錯誤でしか得られないものに違いないよ。クソCD買って後悔しなきゃ(笑)。

中村◆ そうだね。知らない音楽を聴く動機ができるね、視聴によって。昔はFMラジオでエアチェックして、気に入った洋楽の曲をちょっと背伸びして買ってみようとかあったんだよね。MP3が音楽を聴くきっかけになる、それによってCDの売上が支えられるという事があるんじゃないかな。又は広告による収益という、今までとは違ったビジネスモデルが生まれるという事も十分あり得る。

西尾● 仰る通り。結局、こちらは消費者じゃないか。だから、極論に違いかもしれないけれども、自分を満足させる音楽の探索なり、充足感の獲得さえ達成すればいい。売り上げ云々より先に見なきゃいけないこともあります。これからの社会においては探索能力・流されることのない選択眼の鍛錬は必須。

中村◆ 今年の1月から6月までの半期で、100万枚以上売り上げたシングルCDが10年ぶり出なかった、なーんて事も聞き手の多様性を反映しているんじゃないかな。いっぱいある音楽の中で自分は何を選ぶか。ロックが好きなのかヒップホップが好きなのか、アイドルが好きなのか。あ、winMXがスパイウェアってウワサがあるね。

西尾● そういう噂も作るんだろうな。このネット上の音楽問題から波及する恐れのある法律は怖いよ。ファイル交換でネットにまた手が伸びる可能性がある。すなわち、盗聴法の濫用を招く危惧ですね。これは個人情報保護の観点からもおかしい。古物営業法もほぼ同じだね。改正が骨抜きにされたところでさして大きな問題は実はない。これはネットに網をかけたいということではないのかと思う。ネットを国が支配しはじめたら大変だよ。大本営発表状態になりうる。ま、無理なんだけども。ただでさえ、今、日本は「ジャパン・パッシング」ではなく、「ジャパン・パッシング(無視)」という状況にある。要はIT!IT!って叫んでも、わかるヤツはもう見限っていると思ってしまうね。あんな官僚・政治家が蔓延る中、正気を保っている方がおかしいんだよ(笑)。

中村◆ いやな世の中だねえ。一時期出回ったナップスターを潰しても今winMXが出回っているみたいに、永遠のイタチゴッコにしかならないだろうね結局。風俗みたいなものだね。ときどき見せしめに取り締まって、事実上見過ごし。しっかし最近の通信技術の発達は凄まじいね。僕は数ヶ月前までダイアルアップでインターネット接続してたんだけど、ADSLに変えた。思ったよりも全然安いコストで段違いの通信速度を得られて一日中ネット接続してますよ(笑)。

西尾● 無知大損だよ。
 そういえば、僕が高校生のときにISDNというのが始まりました。そして携帯電話も持ちました。そこで僕は驚いた。相手の電話番号が出るわけですよ。それで、電話番号が表示されることは、傍受ではない、お知らせサービスなのだと印象付けた。そうすれば、相手の電話番号はわかるものというのが当然になってくる。そうすると、盗聴法への国民からの疑問が少し忘却されてしまう。やはり、国民がウラの国是を読めていないっていう問題だと思うよ。とにかく緊急に音楽をはじめとした、デジタルデータの一からの見直しが必要な時期にきているのではと、切実に思います。ピッチのGPSのせいで自分の居場所まで突き止められる世の中、問題だと思わないのか、ここの国民は。息苦しい。今日はこんなところで終わります。

――対談者プロフィール
・西尾 1982年、東京都生まれ。
  W大学在学。CottonFab Lab.主宰。
・中村 1979年、山形県生まれ。
  C大学在学。寝てるのが一番幸福なダメな人。

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デジタル技術のイタチゴッコ。破られない暗号はないとは言え、破られるまでの時間が圧倒的に短くなっています。技術の陳腐化がものすごく早い。
音楽配信・デジタルコンテンツ配信をめぐっては本当に様々な意見が交わされています。正直に言って私にはよくわかりません。ただ忘れてはいけないのは、今私たちが享受している文化財産は先人たちへの尊敬と模倣で出来上がっていると言うことなんだろうなと思います。

尊敬するから模倣する。
尊敬するから模倣できない。
どちらも真でしょう、きっと。

投稿者: araara | 日時: 2003年04月21日 20:00

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